科目名 法学(日本国憲法)
単位数 2.0
担当者 広島平和研究所 准教授 河上暁弘
履修時期 前後期(前期:国際学部対象 後期:情報科学部・芸術学部対象)
履修対象 1・2年
概要 皆さんは今まで生きてきて、「○○○のくせに」(こども、生徒、男・女、年下・後輩・部下など)などと言われて悔しい思いをしたことはないだろうか? これらはすべて「自分らしく」生きることができるか否かということに関わるという意味では、すべて<憲法>問題である。
 人が自らの幸せを求めるならば、力が弱いというだけで泣きをみることが決してないように、法によって強い者に歯止めをかけることが必要であろう。憲法は、人間一人ひとり、それぞれいのちとくらしが守られ、そして自分らしく生きることができる社会をつくってゆくためにこそ存在する。それは、言葉を変えていうならば、一人ひとりの「基本的人権」が確実に守られる社会をつくってゆくということであり、それを実現するためのしくみ(制度)として人権保障機構たる国家(政府機構)をつくり、それを民主的に運営することが必要となる。その一切の基本的なルールを定めた「基本法」が憲法である。
 それゆえ、法律専門家のみならず、人権享有主体でもあり、同時に主権者でもある市民にとって、その内容を知っておくことは極めて重要であろう。とりわけ、日本国憲法には、個人の尊重を根本原則としつつ、平和、人権、民主主義に関するさまざまな条項が規定されており、現実社会、現実政治の中で起きるさまざまな問題との関係が常に問われることとなる。まずは、小学校の時分より学び、知ってるつもりになっている、この日本国憲法の基本原理について、よく理解することを授業ではまず目標としたい。(条文を「知っている」とか丸暗記することなどではなく、その基本をよく「わかっている」ことこそ大切。)
科目の到達目標  法学・憲法学の学習で求められるのは、条文を丸暗記したり、重要単語を覚えたりすることではない。「なぜ人類にとって憲法というものが必要なのか?」、「何のため、誰のためのルールなのか?」ということを常に考えてほしい。
 憲法は、一人ひとりのかけがえのない人権を確実に保障するために、国家(政府機構)を創設し、権限を授権するとともに、その権力行使のあり方に縛りをかける法である。その意味で、為政者・権力担当者がまずもってそれを尊重・遵守することが求められるし、民主主義制度の下では、主権者である国民は、人権侵害や憲法違反が起こらないかについて、常に権力担当者を監視し、批判と参画を通じて、政治を制御することが求められる。こうしたことの意味についてよく理解した上で、あるべき政治や社会のあり方、現実政治の置かれた状況等について、多様な視点から(特に反対意見や少数意見から十分に学び)真摯に考えてほしい。
 
 以上のようなことを自ら十分に考えて、自らの考えや意見を、自らの言葉で説得的に表現できるようになることが到達目標である。
受講要件  本講義は、前期;国際学部生対象、後期;情報科学部・芸術学部生対象である。
 講義は、教師と学生の双方が共同でつくりあげるべきものであって、片方だけがすばらしいということはあり得ない。また、通常、法学の学習は一朝一夕にできるものではないので、持続的で積極的な講義への出席・参加を求めたい。
講義において提供した文献・資料等には十分に読み込むことを求めたい。
 
※講義の教材(レジュメ・資料)は、学内講義支援webシステム「It's Class」に、各回事前掲載する。
受講生は、必ず、各自事前にダウンロード・印刷をして、講義に持参してほしい。
(ただし、第1回目は、こちらで用意する予定。しかし、受講生の数は前もってはわからないこともあり、配布資料の数が足りなくなることもないとは言えないので、できれば、第1回目から、各自のダウンロード・印刷にご協力いただければ幸いである。)
 レジュメ・資料は、受講生の復習や今後の研究にも役立つと思われるものをアップロードするつもりなので、その分、量も多く詳細なものとなる予定である。講義では、そうしたレジュメ等に記されていることの全部ではなく、その「要点」をとりあげて解説することとしたい。
 一般に、大学における講義とは、その科目の学習のすべてではなく、導入・スタート地点あるいは問題提起に過ぎず、そこで提示された論点等を受講生各自が資料や専門書等を活用して調べて深めることが求められる。「与えられた」知識を覚えればよいというこれまでの受動的な学習と異なり、講義で提起された論点や問題提起を正確に理解した上で、自ら調べ自ら考えるという積極的・能動的な学習をすることが求められるのが大学であるということを知っておいて頂きたい。そうした学習に役立つようなレジュメ・資料を提供したいと考えている。

なおさらに以下のことについても格別の留意をしてほしい。
私は、大学生を一人の「大人」として扱う。また受講者全員・一人一人の目と表情を見ながら一対一で対話をするかのような姿勢で講義をすることを旨としている。大学教員と学生は、立場と役割が異なり、また教える教わるという関係性もあるが、一人の人間としては、本来は、もはや対等な大人同士の関係と私自身は認識している。
ということは、学生一人一人の意見や個性や立場を尊重しようとしているということであると同時に、(冒頭から意図的に居眠りをする、私語をする、あくびの際に口に手を当てない、不要に携帯電話を操作するなどのような)あからさまに失礼・無礼な受講態度をとる受講生に関しては、その相手を、一人の人間として軽蔑するということも意味する。
また、大学の講義では、精神的には自立した「大人」であるとみなしている全学生に対して、客観的な分析(認識)と主観的な意見(実践)を区別しつつ、教員自身の学説も紹介することがしばしばある。講義はなるべく批判的・多角的な視点を持ちながら聴き、各自、専門書等に当たり、自ら調べ考える姿勢を持って頂きたい。
大学は真理探究の場である。大学生たるもの、メディアやインターネット等を通じてあらわれる世の中の「常識」や多数意見、あるいは極論や俗説に、安易に流されることなく、社会を歴史的・構造的に見る自分なりの視座を持つことを目指してもらいたい。自らが自らの人生の主人公であるとともに、社会を創造する主体であることに鑑み、常に「どうあるべきか(価値論、理念)」、「どうあるか(現状分析)」、「どうするか(実践論)」という3つの視点から、自己と社会を分析してもらいたい。とにかく自分なりの意見を持つこと、そして他者(特に意見の異なる者)の意見をよく聞き、agree to disagreeの立場から、よく意見交換・議論し、安易なレッテル貼りなどすることなく、むしろその違いからこそ学ぶ態度を大切にしてもらいたい。
事前・事後学修の内容 講義の教材(レジュメ・資料)は、学内講義支援webシステム「It's Class」に、各回事前掲載する。
受講生は、必ず、各自事前にダウンロード・印刷をして、講義に持参してほしいし、それを講義前に読み込んでおいてほしい。

そして、法学の学習において、何よりも重要なのが、事後学習(復習)である。
講義で取り上げたポイントをよく思い出しながら、講義教材(レジュメ・資料)をもう一度よく読みこむことがまず重要である。さらに、可能ならば、参考書(後述)や図書館等にある憲法の教科書、そして毎回のレジュメの最後の方に記載してある「参考文献」を読み、応用的な学習を常に心がけて頂きたい。
講義内容 本年度は、以下のような、講義内容を予定している。ただし、講義参加者の要望や憲法をめぐる政治・社会情勢等により、順序や内容を変更することがある(なるべくホットなテーマをとりあげたい)。また、その結果、テーマを変更したり、すべてのテーマをとりあげないこともありうるので、ご理解を頂きたい。

1 憲法とは何か
2 歴史の中の日本国憲法 ―地球時代における日本国憲法の位相
3 日本国憲法の成立
4 国民主権と象徴天皇制
5 平和主義(1)前文・9条の平和主義
6 平和主義(2)戦後日本と憲法9条
7 平和主義(3)憲法政策しての平和
8 基本的人権とは ―原理としての人権
9 幸福追求権と「公共の福祉」
10 法の下の平等と男女共同参画社会
11 信教の自由と政教分離
12 子どもの権利と教育
13 教育の自由と権利―国家と教育
14 生存権と福祉・労働問題
15 憲法改正 
評価方法 基本的に学期末試験(記述式)によって評価する。
ただし、中間期にレポートを課すので、その提出および内容を、成績評価に迷った場合には、加点要素として加味する。同様に、受講票(出席し、真剣に講義を聞き、それを受けて学術的に適切で独創的な意見・感想を書くもの)についても、評価に迷った場合には、加点要素として、加味する(過去の経験上、受講票やレポートを参照する割合が多かった)。
 なお、私としては全力で講義を行うつもりなので、90分間、真剣かつ全力で講義に出席したいと考えている方のみ出席して頂きたい。評価は基本的に学期末試験によって行うので、無理に出席して出席点を稼ごうという姿勢は本講義については必要ない(出席点という制度はない)。
教科書等 A.教科書:
講義の教材(レジュメ・資料)は、学内講義支援webシステム「It's Class」に、各回事前に掲載(アップロード)するので、各自ダウンロード・印刷をして講義当日必ず持参して欲しい(予習・復習にも活用して欲しい)。なお、そのため、若干の用紙代(数百円程度)が必要となる可能性があることを前もって理解して欲しい。その他、参考となる教材や資料を指定・例示することもある。

B.参考書:河上暁弘『平和と市民自治の憲法理論』敬文堂、2012年(論文集)
     山内敏弘・古川純『新版 憲法の現況と展望』北樹出版、1996年(教科書)
     辻村みよ子『憲法』第5版、日本評論社、2016年(教科書)
     
     このほか、入門書・資料集として、次の2冊のどちらかを通読することを薦めたい
     水島朝穂『18歳からはじめる憲法』第2版、法律文化社、2016年(入門書)
     播磨信義ほか編著『新・どうなっている!?日本国憲法』第3版、法律文化社、2016年(入門書)
担当者プロフィール 富山県富山市生まれ。中央大学法学部政治学科卒業、中央大学大学院法学研究科公法専攻博士前期課程修了、専修大学大学院法学研究科公法学専攻博士後期課程修了、博士(法学)。中央大学人文科学研究所客員研究員、明星大学人文学部非常勤講師などを経て、2008年4月より広島市立大学広島平和研究所講師、2014年4月より現職。
専門は、憲法学、地方自治論、人権論等。主著(単著)として、『平和と市民自治の憲法理論』(敬文堂・2012年)、『日本国憲法第9条成立の思想的淵源の研究』(専修大学出版局・2006年)など。
その他、担当者の経歴・研究内容等については、広島市立大学広島平和研究所ホームページ(http://serv.peace.hiroshima-cu.ac.jp/)を参照してほしい。
備考 ※授業へのパソコンの持込を禁止する(特別の事情がある者や事前の許可がある者を除く)。
人の話を聞く際には、なるべく話者の目を見て話を聞き、その上で筆記用具でメモを取るコツを身に着けることは、特に大学生において身に着けるべき最重要の能力のひとつであると考えるからである。