科目名 人間論A(人文・社会科学)
単位数 2.0
担当者 准教授 柿木伸之
履修時期 前期
履修対象 博士前期課程在学者
概要 人間とは何か。この問いは古代ギリシア以来、ヨーロッパの思想史において中心的な問題の一つであり続けてきました。また、ルネサンスにおける「人間」の再発見以来、「人間らしさ」の実現は、文明の発展の目標とされてきました。しかし、今日人間とは何かと問う際に、文明の発展史において想定されてきた「人間」像が、歴史的に作られたものであることを、さらにその歴史が、「人間らしさ」とされてきたものを破壊し、人間自身の生命を根幹から脅かすに至ったことを、けっして忘れることはできません。今や「人間」は、それを想定することの可能性を含めて、根底から問いただされるべき概念と化しています。本講義では、こうした現代の問題意識を踏まえつつ、ヨーロッパの思想史のなかで「人間」がどのように捉えられてきたかを検討することをつうじて、今人間とは何かを問う糸口を探っていきます。
科目の到達目標 人間とは何かとみずから問い、それをつうじておのおのの専門的な営為の位置と意義を見つめ直す、思考の契機と素材を得ることが、本講義の目標とするところです。
受講要件 日常生活の前提を掘り崩すことを怖れることなくみずから徹底的に問い、考えることに面白さを覚え、講義のなかに答えではなく、自分の問いを見いだそうとする姿勢が、受講の要件です。
事前・事後学修の内容 各回の講義の後で、内容を振り返るとともに、紹介された文献を手に取って問題意識を深めることが求められます。それを前提に成績評価を行ないます。
講義内容 以下の流れを予定しています。受講者と相談のうえ、内容などを変更することもあります。
第1回:イントロダクション──人間、この問われるもの(プリーモ・レーヴィ、石原吉郎)
第2回:死すべき者としての人間(古代ギリシアの人間観)
第3回:ロゴスを持つ動物としての人間(アリストテレスとストア派の人間論)
第4回:神の似像としての人間(キリスト教思想の人間論)
第5回:人間らしさの発見(ルネサンスの人文主義)
第6回:知性にして機械としての人間(啓蒙主義の人間論)
第7回:自律としての人間性(カントの人間論)
第8回:歴史において自由を実現する人間(ヘーゲルとマルクスの人間論)
第9回:神なき世界の人間(ニーチェの人間論)
第10回:作る人、遊ぶ人、描く人(ホイジンガ、ヨーナスらの人間論)
第11回:哲学的人間学の展開(シェーラー、ゲーレンらの人間学)
第12回:ヒューマニズムとその先(サルトル、ハイデガーの人間論)
第13回:活動する人間(アーレントの『人間の条件』)
第14回:「人間の終焉」の後に(フーコー、レヴィナス、アガンベンらの人間論)
第15回:まとめ
評価方法 講義への参加度(50%)と文献研究の成果(50%)を総合して評価します。講義への参加度は、基本的には各回の講義で考えたことをひと言記すコメントの内容にもとづいて評価することにしますが、受講者数などに応じて別の方法の導入も検討します。文献研究として、講義で紹介した参考文献のうち一冊についての2000字以上の書評を課します。これは学期末に提出していただきます。
教科書等 教科書は使いません。参考文献を講義のなかで随時紹介します。
担当者プロフィール 20世紀のドイツ語圏を中心に、近・現代の哲学と美学を研究しています。『ベンヤミンの言語哲学──翻訳としての言語、想起からの歴史』(平凡社)、『パット剝ギトッテシマッタ後の世界へ──ヒロシマを想起する思考』(インパクト出版会)などの著書があります。
備考