科目名 共生の哲学Ⅰ
単位数 2.0
担当者 准教授 柿木伸之
履修時期 前期
履修対象 2年次以上
概要 今日「共生」ということが、私たちの目指すべき生き方として、マス・メディアにおいてしばしば語られています。「多文化共生」、「自然との共生」、「共生社会」など「共生」という語を軸に据えたスローガンは、枚挙にいとまがありません。しかし、こうして「共生」が声高に叫ばれるとき、「共に生きる」ということで、いったいどのようなことが考えられているのでしょう。「共に」とは、誰と、あるいは何と共に存在することなのか。共に生きるとはどういうことなのか。いや、そもそも生きるとはどういうことなのか。そして、これから共に生きていくために、どのようなことが考えられなければならないのか。あるいはどのような問題が乗り越えられなければならないのか。これら根本的な問題に取り組むことなしに、私たちは「共生」ということを私たち自身の生き方として引き受けることはできないはずです。この講義では、これらの問題への一つの哲学的な取り組みを示すことで、自分とは異質な他者との「ポストコロニアル」な共生、すなわち植民地主義への反省を踏まえ、植民地主義的な支配と被支配の関係を乗り越える共生へ向けた見通しを開くことを試みます。それをつうじて、受講者一人ひとりが、共生ということを自分自身の生の問題として引き受け、自分が立っている今ここを問い直すようになることが、講義の目的です。前期の講義では、私たちの生そのものへ眼差しを向けたうえで、「ポストコロニアル」な共生へ向けて考えなければならない近代の諸問題を中心に考察します。
科目の到達目標 受講者一人ひとりが、「ポストコロニアル」な他者との共生へ向けて考えなければならない近代の諸問題を理解するとともに、それを自分自身の問題として引き受け、自分の手で掘り下げていく視座を得ることが講義のねらいです。
受講要件 安易に「情報」としての解答を求めるのではなく、思想家たちが格闘した問題を自分自身の問題として考えようとする姿勢が、本講義の受講の要件です。
事前・事後学修の内容 講義の前に、教科書の該当する箇所(1回につき1章を扱います)に目を通し、問題意識を持って講義に臨んでください。講義に際しては、ノートを取りながら、講義の内容を自分なりに掘り下げるよう努めてください。講義後は、講義の内容を振り返るとともに、講義のなかで紹介される文献をできるだけ数多く読むようにしてください。なお、後期の「共生の哲学Ⅱ」では、前期の講義の問題意識を引き継ぎながら、他者との共生についての思考をさらに掘り下げていきますので、後期も継続して受講することが望ましいです。
講義内容 おおむね以下のような予定で講義を進めます。進行などに応じて順序や内容を変更する可能性もあります。
1.イントロダクション
2.生きるということ
3.共に生きるということ
4.「グローバル化」する世界における共生の課題
5.啓蒙とその弁証法
6.生に対する権力の諸相
7.植民地主義の問題
8.「オリエンタリズム」という問題
9.多文化主義の問題
10.言語を捉え直す
11.歴史認識という課題
12.ジェンダーを見つめ直す
13.アイデンティティを捉え直す
14.特別講義
15.書評発表会とまとめ
評価方法 各回の講義をつうじて考えたことをひと言記したコメントの内容(50パーセント)、各回講義の冒頭での前回の講義の簡潔なまとめの発表(最初の2回の講義で割り当てを決めます:20パーセント)、そして参考文献として紹介した図書一冊についての2000字以上の書評(最後の講義で発表していただきます:30パーセント)を総合して評価します。出席自体は評価の対象になりませんが、10回以上出席した履修者だけが成績評価の対象になります。出席回数は各自で管理してください。
教科書等 教科書:柿木伸之『共生を哲学する』(ひろしま女性学研究所)
参考書:教科書などをつうじて随時紹介します
担当者プロフィール 研究の専門領域は、近・現代ドイツの哲学と美学。現在はとくに、20世紀前半に思想家として、批評家として、また類いまれなエッセイストとしても活躍したヴァルター・ベンヤミンの哲学的思考に強い関心を持って取り組んでいます。著書に、『ベンヤミンの言語哲学──翻訳としての言語、想起からの歴史』(平凡社、2014年)、『パット剝ギトッテシマッタ後の世界へ──ヒロシマを想起する思考』(インパクト出版会、2015年)などがあります。翻訳書に、細川俊夫『細川俊夫 音楽を語る──静寂と音響、影と光』(アルテスパブリッシング、2016年)があります。
備考