科目名 | 国際人道法 | ||
単位数 | 2.0 | ||
担当者 | 真山 全 | ||
履修時期 | 集中講義・実施日調整中 | ||
履修対象 | 大学院学生(学内所要手続を了した学部学生等の聴講可) | ||
講義形態 | 講義 | ||
講義の目的 | 国際法には戦争や武力紛争のやり方を定める部分があり、国際人道法(戦争法、武力紛争法)と呼ぶ。これは、人や物の組織的な殺傷と破壊を許容する特異な法で、国際法のなかでも最も古い歴史を有する。本講義の目的は、国際人道法の基礎的知識を学生が習得し、それによって実際に発生する具体的問題を分析できるようにすることである。 | ||
到達目標 | 学生が国際法の構造を理解した上で、国際人道法の基本的知識を習得し、もって武力紛争中の様々の行為の国際法的な分析と評価を可能とする。特に日本がかかわった戦争における交戦国や中立国の行為の法的妥当性を判断できるようにする。 | ||
受講要件 | 講義は日本語で行われるため、これを理解できる日本語能力を要す。但し、質問は英語でも可とする。 | ||
履修取消の可否 | 可 | ||
履修取消不可の理由 | |||
事前・事後学修 |
(1)国際法について勉強したことがない者は、国際法概説書を早めに通読しておくことが望ましい。 そのような概説書については、下掲「教科書等」の欄を参照せよ。 (2)講義初期に講義レジュメを配付する。その各回講義分を事前に参照されたい。 (3)講義後には、レジュメ、講義中の説明、及び条約集その他の資料をまとめたノートを整備してお くとよい。 |
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講義内容 |
(1)国際法の基本構造・武力行使に関する国際法規則の概要:「安全保障に関する国際法と国際人 道法の関係」、「jus ad bellumとjus in bello」 (2)国際人道法の適用に関する基本問題(その1):「法上・事実上の戦争」、「差別適用論」 (3)同(その2):「国際的と非国際的の武力紛争の区分」、「国際機構の行う暴力行為」 (4)害敵方法の規制(その1):「戦闘員・兵器プラットフォームの外見」、「背信行為と奇計」 (5)同(その2):「攻撃目標選定基準」、「防守・無防守地域」、「軍事目標と民用物」、「特 別保護対象」、「海空戦の特則」、「宇宙戦法規の成立可能性」 (6)同(その3):「戦闘員と文民」、「軍隊構成員」、「敵対行為直接参加の文民」 (7)害敵手段の規制(その1):「兵器の使用規制に関する原則」、「通常兵器の使用規制」、 「サイバー戦の規制」 (8)同(その2):「生物・化学兵器の使用規制」、「核兵器の使用規制」 (9)武力紛争犠牲者の保護(その1):「傷病兵と難船者」、「衛生・宗教部隊」 (10)同(その2):「捕虜」、「文民」 (11)中立法:「伝統的な中立法」、「現代における中立法」 (12)履行確保(その1):「相互主義」、「戦時復仇」 (13)同(その2):「戦争犯罪人の処罰」、「国内裁判所と国際的な刑事裁判所の管轄権」 (14)同(その3):「国際刑事裁判所(ICC)の処罰対象犯罪と管轄権の範囲」 (15)日本と武力紛争法:「日本が当事国であった戦争・武力紛争」、「日本が非当事国であった戦 争・武力紛争」、「国内法の整備」 |
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期末試験実施の有無 | 実施しない | ||
評価方法・基準 |
(1)講義中の学生からの質問(4割):質問の内容が法的に優れているか否かではなく、講義時間 中に積極的に質問するかどうかで評価する。大学院講義であるので(1)の比重を最も大とし た。なお、講義外の質問も勿論歓迎されるが、それらは評価対象にはならない。 (2)講義中の講師からの質問への応答振り(3割):講師は簡単な質問を繰り返しながら講義を進 める。学生の応答が法的に正しいか否かというよりは、自分で考えようとしているかどうかが ここでの評価の決め手になる。 (3)平常点(3割):講義参加態度や事前学習振りも評価対象とする。 |
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教科書等 |
(1)講義レジュメ(講義必携):講義初期に配付する。 (2)条約集(講義必携):『国際条約集』(有斐閣)又は『ベーシック条約集』(東信堂)のいずれか 一を講義時に携行されたい。これらは毎年改訂されるが、ここ7、8年刊行のものであればよ い。 (3)自習用概説書(講義持参不要):国際法をはじめて勉強する者で国際法概説書を有していない 場合には、加藤信行他著『ビジュアルテキスト国際法』(有斐閣(2022年))の通読をす すめるが、日本の大学学部で用いられている国際法概説書なら何でもよい。 (4)自習用専門書(講義持参不要):国際人道法全般を詳細に説明する最近の邦語文献として黒崎 将広他著『防衛実務国際法』(弘文堂(2021年))がある。詳しく調べたい場合にはまずこれを参 照するとよい。また、次の文献は、国際人道法の適用を核兵器使用を例に説明したもので、本 講義主要論点がほぼ全部含まれており、事前に読了しておくと便利である。真山全「核兵器使 用と戦争犯罪−戦争犯罪処罰に至るまでの国際法上の関門(上)(下)」広島市立大学広島平 和研究所編『戦争の非人道性−その裁きと戦後処理の諸問題』(広島平和研究所ブックレット 第5巻(2018年)所収)。 |
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担当者プロフィール | 甲南大学法学部助教授、防衛大学校国際関係学科教授、大阪大学大学院国際公共政策研究科教授を経て、2022年から大阪学院大学国際学部教授、大阪大学名誉教授 | ||
講義に関連する実務経験 | ジュネーヴ諸条約第1追加議定書国際人道事実調査委員会委員・第4副委員長(2007年3月〜2012年2月)、国際刑事裁判所設立ローマ外交会議・同準備委員会日本政府代表団法律顧問(1998年5・6月、1997年7月〜2002年4月)、国際刑事裁判所カンパラ規程検討会議日本政府代表団法律顧問(2010年6月)、特定通常兵器禁止制限条約政府専門家会合日本政府代表団員(2003年3月〜2005年8月)等。 | ||
課題や試験に対するフィードバック | 大学院講義であるので特に課題提出や筆記試験を予定しないが、講義中の質問等で学生の理解が不足していることが分かった場合には、講義時間前後に個別に補足説明を行う。 | ||
アクティブ・ラーニング | |||
キーワード | 国際法、国際人道法、戦争法、武力紛争法、敵対行為、大量破壊兵器、核兵器、文民、捕虜、ジュネーヴ条約、戦争犯罪、国際刑事裁判所 | ||
備考 |
(1)講義中の電子機器の使用を原則として認めない。これは、講義を電子機器に入力するよりも、 それをノートに筆記するのが最も効果的な勉強方法であり、また、条約条文も各種サイトより も条約集という信頼できる文献で確認すべきだからである。但し、特別の事情からその使用を 希望する場合には(例えば、筆記不能のため電子機器に講義中の説明を入力する必要がある場 合)、講義初回にその理由を講師に説明し、使用許可を求められたい。 (2)身体の状況から(1)以外でも講義実施上特別の配慮を求める場合には、事前に事務担当者に 申し出るか講義初回に講師に申し出られたい。 |