科目名 国際組織と国際制度
単位数 2.0
担当者 特任教授 佐藤哲夫
履修時期 後期
履修対象 1・2年次
講義形態 講義
講義の目的 平和学研究科の国際法関連科目において、「現代国際法と平和」に基づく発展科目として位置づけられる。現代国際法の理解にとっては、国際組織の役割と活動の理解が不可欠となっており、受講生は、国際組織法の体系的教科書に従って、国際組織の法的な仕組みや原則について、また主要な分野の国際制度について基礎的な知識を修得する。
到達目標 受講生は、国際組織や国際制度が複雑かつ高度に交錯する現代国際社会の法的仕組みや法的諸問題についての基礎的な知識を修得するとともに、そのような諸問題を的確に分析できるための国際法の思考方法を身に付けることにより、平和創造及び平和維持に関し発信する能力を獲得する。
受講要件 特になし。
履修取消の可否
履修取消不可の理由
事前・事後学修 教科書の指定範囲と指定資料を読み、授業における質疑応答の準備をする。
講義内容 ・この授業は受講生が極めて少ないと予想される(1−3名程度)ことに鑑みて、可能な限り双方向的に質疑応答や議論形式を取り入れることを予定している。
・受講生が学部段階で既に国際法を履修しているか否か、複数の受講生の場合に国際法の既修者と未修者が混在しているか、などは、授業のレベルや進め方にとって極めて重要な考慮要素である。特に国際法の既修者と未修者が混在している場合には、両者にとって満足のいく授業を行うためには、十分な工夫が必要となる。このために、第1回の授業において、受講生の状況を確認し、十分に相談の上、授業の進め方について決めるものとする。
・第2回〜第15回の授業において扱う内容については、基本的に以下の項目に準拠して進めたい。
・他方で、以上の事情を踏まえて、毎回の授業の進め方については、授業を前半(40分)と後半(40分)に分けて、次のように進めることを考えている。
・前半(40分)では、下記の体系的教科書を使用して、毎回の項目の該当範囲を学習していく。事前に十分に予習していることを前提として、10分程度、教員から特に重要なポイントのみ簡潔に説明する。その後の30分程度は、当該範囲の内容に関して双方向的な質疑応答や議論を行う。国際法の既修者と未修者が混在している場合には、未修者の疑問・質問に対して既修者が回答を試み、それを踏まえて教員が説明を加えるなど、適宜、有益な対応を試みたい。具体的には、事前に、履修学生から、教科書の内容について疑問・質問を提出してもらい、それに回答することを基本として進めたい。
・後半(40分)では、前半での体系的理論的な学習を補完することを目指して、具体的な事例や最新の争点などを扱う文献を読み、ここでも双方向的な質疑応答や議論を行う。15分〜20分程度で、受講者に担当文献の内容を簡潔に紹介してもらい、その後の20分〜25分程度において、双方向的な質疑応答や議論を行う。扱う事例や最新の争点は、受講生の興味関心で選択するものとする。事例や最新の争点が、授業の前半で学習する内容に対応するものであれば理想的であるが、様々な事情から、そのように都合良く選択できるものではないので、14回の授業のどこかで扱う内容であれば良いとし、内容的に必要であれば、適宜、教員から補足説明を加えることにする。国際法の未修者の場合には、原則として、森川幸一他編『国際法で世界がわかる』(岩波書店、2016年)を使用する。

・具体的な授業計画としては、まず、国際組織や国際制度が交錯する現代国際社会の法的仕組みの基本的理解のために、国際組織法の観点から、以下の第2回から第11回までの重要分野における基礎的な知識の獲得と分析視点の理解をめざす。これらの知識と理解を前提として、次に、第12回から第15回まで具体的な国際組織や国際制度を取り上げ、平和の維持と紛争の予防という観点から理解を深める。

1 授業の進め方についての相談
2 国際組織と国際組織法、歴史的発展、国際連盟の設立と構造
3 国際連盟の任務と活動
4 国際連合の仕組みと発展
5 国際組織のダイナミズムの視点(「損害賠償事件」)
6 国際組織の国際法上の地位(国際法人格、黙示的権限の法理、国際責任など)
7 国際組織の国内法上の地位(特権免除など)
8 国際組織の表決制度(多数決制度の問題)
9 国際組織の表決制度(拒否権とコンセンサス方式)
10 国際組織の決議の法的効果
11 国際公務員制度
12 国際連合による平和維持活動
13 国際連合による集団安全保障制度
14 国際連合を中心とする人権保障の国際的制度
15 WTO体制と紛争解決制度
期末試験実施の有無 実施しない
評価方法・基準 平常点。毎回の授業における準備状況、質疑応答の内容や質などを総合評価し、到達目標との関係で、広島市立大学成績評価に係るガイドラインに準拠して評価する。
教科書等 次のものを、第2回から第13回の授業の教科書と指定する。
佐藤哲夫『国際組織法』(有斐閣、2005年)
第14回と第15回の授業については、使用する文献を配付する。

・事例参考書としては、国際法の未修者の場合には、原則として、森川幸一他編『国際法で世界がわかる』(岩波書店、2016年)を使用する。


★ 具体的な事例や最新の争点などを扱う文献等については、下記の「備考」欄を参照せよ。
担当者プロフィール 研究室:情報科学部棟別館4階 
講義に関連する実務経験
課題や試験に対するフィードバック メールによる問い合わせや質問を受け付けている。
アクティブ・ラーニング
キーワード 国際法、国際連合、国際連盟、集団安全保障制度、平和維持活動
備考 ★ 具体的な事例や最新の争点などを扱う文献としては、以下のような資料集や雑誌などを挙げておく。

●森川幸一他編『国際法で世界がわかる』(岩波書店、2016年)

●『法学セミナー』
・「特集 国際法の最新論点――国際社会の変化と国際法の展開」765号、2018/10

●『論究ジュリスト』
・「特集1 21世紀における「共存の国際法」」37、2021年/秋号
・「特集1 「自国第一主義」と国際秩序」30、2019年/夏号
・「特集1 グローバルな公共空間と法」23、2017年/秋号
・「特集 国際制度の新展開と日本――規範形成と国内受容のダイナミズム」19、2016年/秋号
・「特集1 環境条約の国内実施――国際法と国内法の関係」07、2013年/秋号

●『ジュリスト』
・「特集 条約体制のダイナミズム――国際公共価値の拡大と日本の課題」No.1409、2010・10・15
・「特集 日本における国際法」No.1387、2009・10・15
・「特集 海・資源・環境――国際法・国内法からのアプローチ」No.1365、2008・10・15
・「特集 日本と国際公秩序――集団的自衛権・国際刑事裁判所の原理的検討」No.1343、2007・10・15
・「特集1 国際法と日本の対応」No.1321、2007・10・15
・「特集 国際制度と国内制度の交錯と相互浸透」No.1299、2006・10・15

●『法律時報』
・「特集=グローバル法vs国際法――国内における実現の場面から」2022年4月号、通巻 1175号
・「特集= 処罰による平和、和解による平和――刑事法による武力紛争の克服は可能か?」2021年7月号、通巻 1165号
・「特集= 国際経済秩序をめぐる法動態」2019年9月号、通巻 1142号
・「特集 国際刑事法の現在」2018年9月、通巻 1129号
・「特集 「国際立法」の現在――国連国際法委員会創設70年を契機に考える」2017年9月、通巻 1116号
・「特集 戦後70年と安保法制――「国際法の支配」と立憲主義」2015年11月、通巻 1092号
・「特集 過去の不正義と国際法――日韓請求権協定の現在」2015年9月、通巻 1090号
・「特集 「国際的保護」をめぐる新たな潮流――難民、無国籍者、補完的保護」2014年10月、通巻 1078号

★ 判例の解説としては、次のものがある。
薬師寺公夫他編『判例国際法〔第3版〕』(東信堂、2019年)
松井芳郎他編『判例国際法〔第2版〕』(東信堂、2006年)
杉原高嶺他編『国際法基本判例50 第2版』(三省堂、2014年)
杉原高嶺他編『国際法基本判例50』(三省堂、2010年)
森川幸一他編『国際法判例百選[第3版]』(有斐閣、2021)
小寺彰他編『国際法判例百選[第2版]』(有斐閣、2011年)
山本草二他編『国際法判例百選』(有斐閣、2001年)

★ 資料集としては、次のものがある。
西谷 元編著『国際法資料集[第2版]』(日本評論社、2016年)
大沼保昭編『国際法資料集 上下 第2版』(東信堂, 2002年)

 国内法の勉強にとって六法が不可欠なことと同様に、国際法の勉強にとっては条約集が不可欠である。有斐閣(詳細版)、東信堂(詳細版、簡略版)、三省堂(簡略版)、信山社(簡略版)の4種類の条約集が出版されており、授業において言及する条約や国連決議などを参照する観点からは、基本的にはいずれの条約集でも良い。購入時点での最新版を購入してください。