科目名 予防外交論
単位数 2.0
担当者 吉川元
履修時期 後期
履修対象 特になし
講義形態 講義
講義の目的 予防外交論は、まだ開発の緒についたばかりの研究分野です。ガリ国連事務総長(当時)が国連安全保障理事会に対して提出した報告書「平和の課題」のなかで,冷戦後世界で国連が取組むべき平和と安全保障政策の一つに予防外交を掲げられて以来、この用語が広く世界に流通するようになりました。予防の対象として当初、国際戦争の予防が意図されました。しかし、過去半世紀に国際戦争は激減し、内戦や民衆殺戮(政府による人民の大量殺戮)があとを絶ちません。しかも、冷戦後には国家ガバナンスのあり方に起因する民族紛争や民衆殺戮に国際社会の関心が高まったことから、今では予防外交の対象とすべきは、内戦や人道的危機の予防という視点が主流になっています。国家による武力行使や国家による暴力を予防することがどの程度可能なのか。特に、本年2月に始まったロシアによるウクライナ侵攻は、予防できなかったのか。様々な事例を取り上げて予防外交の現実と課題を検討してみます。
到達目標 予防は治療に勝る。こうした発想から予防医学が発達しました。それでは国際関係においては紛争の予防がどこまで可能なのか。紛争予防を阻む原因はどこに潜むのか。予防外交の現状と課題について理解を深めます。
受講要件 特になし
履修取消の可否
履修取消不可の理由
事前・事後学修 特になし
講義内容 国際紛争の予防という発想は古くからありましたが、予防外交の実践の歴史は浅く、紛争予防、さらには戦争の予防という用語が実際に国際社会で人口に膾炙するようになったのは、冷戦の終結後のことです。そこで20世紀の予防外交(紛争予防)の起源をたどりつつ、紛争の予防の実践とその課題について以下の順で考察します。

1)「予防外交」の起源
2)予防外交の見立て(中期・長期予防と短期予防)
3)武力紛争の予防の見立て(国際戦争の原因論)
4)民族戦争の原因とその対処法
5)侵略戦争の予防の手立て
6)戦争予防の国際規範
7)冷戦後の予防外交論の興隆とその対処法
8)民主主主義による平和論再考
9)安全保障共同体論
10)OSCEの予防外交体制
11)国連の予防外交体制
12)構造的暴力の予防
13)予防外交論と平和構築論の比較研究
14)予防外交の事例研究(バルト三国の事例、マケドニアの紛争予防等)
15)アジアの予防外交の現状と課題
期末試験実施の有無 実施しない
評価方法・基準 積極的発言60%
レポート40%
教科書等 【主要参考文献】

【主要参考文献】
1.吉川元「予防外交論の現状と課題」(ヒロシマ70平和セミナー「平和の創造とは――平和研究の過去・現在・未来」
 2015
2.吉川元編著『予防外交』三嶺書房、2000年
3.吉川元「OSCEの安全保障共同体創造と予防外交」『国際法外交雑誌』V.98、No.6平成12年
4.吉川元「グローバル化と安全保障パラダイム転換―ガバナンスを問う安全保障観の形成過程」初瀬龍平・松田哲編『人間存在
 の国際関係論―グローバル化の中で考える』法政大学出版会、2015年
5.Thomas, Daniel Charles, The Helsinki Effect:International Norms, Human Rights, and Demise of Communism,
 Princeton, NJ: Princeton University Press, 2001)
6.C.M. Horne and L. Stan, eds., Transitional Justice and the Former Soviet Union, Cambridge University Press, 2018
担当者プロフィール
講義に関連する実務経験
課題や試験に対するフィードバック 毎週火曜日4時限を面談・相談時間(office hour)にしますので、この時間帯に研究上の、また学習上の相談に遠慮なく自由に研究室のドアをノックしてください。
アクティブ・ラーニング
キーワード 予防外交、紛争予防、紛争原因、戦争、民族紛争、メディアの自由、民主主義
備考