科目名 財政学T
単位数 2.0
担当者 教授 寺田 英子
履修時期 前期
履修対象 2年
講義形態 講義
講義の目的 この講義では,経済学の視点からみた公共政策の役割とその限界について学びます.
対象となるのは,政府や公的企業と呼ばれる企業などで,これらは公共部門と呼ばれています.公共部門は,企業や家計が取り組むことができない活動を行なっています.なぜ公共部門が必要なのか,それはどのような場合にうまく機能するのか,うまく機能しない理由は何かを学びます.
 経済学の概念としては,「市場の失敗」と呼ばれる現象を起こす外部性,公共財,および独占企業の行動と政府規制に関する基礎的な知識を学びます.
到達目標  この科目は国際学部のディプロマ・ポリシーを構成する「知識・技能」を身につけることを目標としています.
私たちの身近に起こっている社会問題をとりあげて,ミクロ経済学,公共選択の理論を使ってどのように考えることができるのか学びます.
 道路、ダム、公共施設等について、建設前にはその有用性が高く評価されたにもかかわらず、建設後にムダな事業だったと批判されることがよくあります.公共政策を実施するときには、限られた予算を効果的に使うために、事前の評価と事後のモニタリングが政策決定の基礎として完備される必要があります.そのような評価に用いられるのが費用・便益分析です.この講義の後半では費用・便益分析の基礎的な考え方を学びます.
受講要件  特にありません.経済学,ミクロ経済学,交通論を履修していることが望ましいです.
履修取消の可否
履修取消不可の理由
事前・事後学修 ・講義終了後は、教科書等を参照してノートを整理して下さい.
・内容が分かりにくいときは、教科書を参照してください.井堀利宏、『公共経済学』、新世社、1998年
 グレゴリー・マンキュー著『マンキュー経済学 Iミクロ編』東洋経済新報社、2013年.
・費用便益分析の教科書は、以下の「教科書等」にある翻訳書を参照してください.ただし、日本語訳の間違いが多いので、お薦めはしません.
・メールによる質問も受け付けます.個別に説明が必要な場合には,WebClassメールで予約を申し込んで下さい.WebClassメールの使い方は講義で説明します。
講義内容 第1回  市場と政府の役割について
第2回  公共経済学的な考え方とは
第3回  投票;中位投票者モデルについて
第4回  投票;投票のパラドックスについて
第5回  合理的な政策選択について
第6回  第1回 クイズ(第2回から第5回の講義内容が出題範囲)と重要な概念の解説
第7回  第1回クイズの講評とアドバイス、公共財の供給ゲーム
第8回  市場の失敗と政府の政策介入
第9回  市場需要曲線、市場供給曲線、および、市場均衡
第10回 公共財への市場需要曲線(第9回の続き)
第11回  自然独占市場、競争市場の比較
第12回  第2回 クイズ(第7回から第11回の講義内容が出題範囲)と重要な概念の解説
第13回 効率性を測る仕組みとしての費用便益分析
第14回  公共支出の評価について;費用便益分析(1)、質問票を配布
第15回  公共支出の評価について;費用便益分析(2)、質問への回答
8月上旬に第 3 回 クイズ(第13回から第15回の講義内容が出題範囲)を実施します。
期末試験実施の有無 実施する
評価方法・基準 ・学期中にクイズ(小テスト)を3回予定しています.ノート・講義中の配布資料持ち込みで実施します.クイズ実施の予定は「授業内容」に書いたとおりです.2週間前にアナウンスをします.
・クイズの結果で成績評価をします.レポート形式の課題は予定していません.
・クイズの目的は講義で説明した重要な概念が理解できたかどうかを確認することです.クイズ終了後に解答例を配り,解説をします.
・全体的な理解にやや難がある場合には、講義内容を再解説するので、予定していた授業内容と一致しないことがあります.
・出席回数の要件については『学生 HANDBOOK』に規定されているとおりです.
教科書等 教科書:井堀利宏、『公共経済学』、新世社、1998年
グレゴリー・マンキュー著『マンキュー経済学 I ミクロ編』東洋経済新報社,2000年.
佐藤主光、『公共経済学』、新光社、2017年.
J. B. Stevens, The Economics of Collective Choice, Westview Press, 1993.
Boardman, A., D. Greenberg, A. Vining, and D. Weimer, Cost-Benefit Analysis, Prentice Hall, 2010.(岸本光永監訳、出口亨、小滝日出彦、阿部俊彦訳『費用・便益分析』ピアソン・エジュケーション、2004年)
担当者プロフィール 研究者としての私の特徴
@ 分析ツールは公共選択論で,現実の政策に関心がありますが、その中身というよりは,
制度的な意思決定の仕組みや経済的なインセンティブに興味があります.
A 市場メカニズムにまかせるほうが,いろいろと無駄は生じるものの,計画経済的な状況
よりもはるかにマシだ,と考えています.
私の研究内容
@ イングランドの地方部における公共交通と社会的包摂の研究
A 公共交通のアクセシビリティに関する日とイングランドの比較研究
B 日本の国際拠点港湾の民営化に関する研究
講義に関連する実務経験 1987年〜1998年まで(株)PHP総合研究所というシンクタンクで研究員をしていました。男女雇用機会均等法(1985年制定)が施行されて2年目の総合職として入社しましたが、大学院での研究内容(公共交通、港湾物流)を活かすことのできる仕事でした.外部資金の獲得も担当業務の一部だったので,研究企画をコンペに出して助成金を獲得し,大学教員の研究作業をコーディネートして成果を出すという経験が今でも役立っています.
課題や試験に対するフィードバック ・クイズに備えて講義内容についての質問を集め、回答します.
・クイズ終了後に、解答例を配布し解説をします.
・全体的な理解にやや難がある場合には、講義内容を再解説します.そのため、予定していた授業内容とずれが生じることがあります.
アクティブ・ラーニング
キーワード 公共経済学,市場経済,市場の失敗,政策介入,公共投資,費用便益分析.
備考