科目名 油絵材料・技法演習(古典技法)
単位数 2.0
担当者 講師 菅亮平
履修時期 後期
履修対象 2年次
講義形態 演習
講義の目的 「絵画材料演習」と「美術史研究」の二つの観点から、模写を題材としたグリザイユ・カマイユ技法およびグレーズ技法の実習に取り組む。「The Museum of Copying Art(複製美術館)」と題した本講座では、演習後に各自が製作した模写を年代順に陳列した成果展を実施する。
到達目標 ・絵画の諸材料の特性とともに、絵画技法を重層構造として物理的側面から理解できる。
・美術の実践者として美術史と向き合う姿勢を身につけ、油彩の絵画芸術を基軸とした近世の西洋美術史の体系を理解できる。
・絵画の制作工程を分析することで、体系的に制作プロセスを構築する技能を養い、多様な表現を展開する姿勢を身につける。
(知識・技能、判断力・表現力、主体性)
受講要件 ・「油絵実習UA」を単位履修していること。
・「絵画材料論」を履修していることが望ましい。
履修取消の可否
履修取消不可の理由 2年次必修の専門科目である。
事前・事後学修 ・演習前に「絵画材料論」の講義内容を復習しておくことが望ましい。
・演習前に吸収性地の支持体を製作する。
・演習終了後、約1年の作品の乾燥期間を経て「ワニスがけ」実習を行う。
講義内容 【グリザイユ技法について】
美術用語としてのグリザイユは、狭義でフランドル派絵画の多翼祭壇画の扉などに描かれた「トロンプルイユ」を意味する。あるいは、油彩画の下層描きとして、モノクロームで明暗配置とモデリングを行う技法プロセスを指す。しかし、グリザイユ技法は、テンペラなどのように古典絵画技法の一つとして独立したものではない。その本質とするところは、「形」「明暗」「色彩」という絵画(平面表現)の造形要素を、下層から上層までのそれぞれの作画工程のなかで段階的に表出させることで、表現の精度を担保することにある。つまり、単に「技法」というよりは、絵画工学上の概念の一つなのであり、今日に至るまで平面表現の中で広範囲にその原理が適用されてきた。本講座では、グリザイユ技法の制作プロセスを通して、絵画諸材料の特性とともに制作を体系的に構築する見方を修得する。そして、表現と材料の不可分性について本質的な理解が獲得されることを期待する。

【演習のポイント】
・西洋絵画の伝統的な絵画下地としての吸収性地を製作し、作画におけるその有意性を理解する。
・精確な下図に基づく計画的な制作プロセスを通して、西洋絵画の古典技法を構造的に理解する。
・膠とアラビアガムの水性媒剤の性質を理解して、水性絵具による下層描きの有効性を理解する。
・絶縁層としてのインプリマトゥーラの塗布から絵画の積層構造の在り方を理解する。
・油絵具の二大特性である不透明性と透明性の活かし方を画用液の扱い方とともに理解する。

【プログラム】
01. 課題説明のガイダンス / 実習室のセッティング
02. 個別のチュートリアル / 模写の題材選定
03. トリミングの検討 / 資料画像の印刷
04. トレース作業 / 素描
05. 骨描き
06. ガッシュによるアンダー・ドローイング
07. インプリマトゥーラ
08. グリザイユ技法の解説
09. 油絵具の10階調のモノクロームの絵具作り
10. 油絵具によるグリザイユのアンダー・ペインティング
11. グレーズ技法・調合油の解説
12. グレーズ技法によるオーバー・ペインティング
13. 混合技法の解説
14. レポート提出 / 講評
15. 成果展の開催
期末試験実施の有無 実施しない
評価方法・基準 演習中の取り組みの姿勢や授業態度、課題説明の捉え方や講評会でのプレゼンテーションを評価の基本条件とし、提出作品の造形力や表現内容について点数化して評価する。
判定の基準として課題への取り組みや提出作品の内容が満たされていれば「可」とし、提出作品の内容や造形的に工夫がなされているものを「良」とする。これらに加え、制作において各々が問題意識と自身の取り組むべき課題意識を見つけ出す自己分析をはじめとする積極的な取り組みの姿勢や工夫など、授業態度も含めた総合的観点において高い学習成果が認められたものを「優」とする。その中でさらに独自性を表した制作について「秀」と認定する。
教科書等 参考図書・ウェブサイトの情報は授業内で紹介する。
担当者プロフィール 東京藝術大学で博士号(美術)、ミュンヘン造形美術アカデミーでマイスターシューラー号を取得する。現代アートの領域で国内外を問わず美術作家として活動する。

アーティストウェブサイト:https://ryoheikan.com
授業用ウエブサイト:https://class.ryoheikan.com
研究室番号:644
講義に関連する実務経験
課題や試験に対するフィードバック 提出した作品は講座の最終日に講評する。
アクティブ・ラーニング PBL(学習者が自ら問題を発見し、設定した課題を解決しながら学ぶ)
キーワード 絵画材料、絵画技法、絵画技法史、メディア
備考 ※ 再履修の場合、教材費は再度支払いが必要である。